役員法令試験に合格するには、過去問の分析・攻略を欠かすことはできません。
この記事では「重要条文シリーズ」として、過去問を分析して頻出の条文と過去問を取り上げ、法令試験突破に必要な知識の習得の一助になればと思います。
今回は、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(以下「改善基準告示」といいます。)第4条(貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間等)を取り上げます。
この条文は役員法令試験でよく出る?
特に出題回数が多かった条文
関東運輸局が公開している令和3年5月実から令和8年7月までに実施された計32回の過去の試験問題を分析した結果、改善基準告示第4条に関する問題は延べ32問出題され、今回の分析で出題回数が特に多かった条文の一つでした。
改善基準告示第4条とは
条文の内容
(貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間等)
第4条 使用者は、貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者を使用する場合は、その拘束時間、休息期間及び運転時間について、次に定めるところによるものとする。
一 拘束時間は、1か月について284時間を超えず、かつ、1年について3300時間を超えないものとすること。ただし、労使協定により、1年について6か月までは、1箇月について310時間まで延長することができ、かつ、1年について3400時間まで延長することができるものとする。
二 前号ただし書の場合において、1か月の拘束時間が284時間を超える月が3か月を超えて連続しないものとし、かつ、1か月の時間外労働及び休日労働の合計時間数が100時間未満となるよう努めるものとすること。
三 1日についての拘束時間は、13時間を超えないものとし、当該拘束時間を延長する場合であっても、最大拘束時間は15時間とすること。ただし、貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者に係る一週間における運行が全て長距離貨物運送(一の運行(自動車運転者が所属する事業場を出発してから当該事業場に帰着するまでをいう。以下この項において同じ。)の走行距離が450キロメートル以上の貨物運送をいう。)であり、かつ、一の運行における休息期間が、当該自動車運転者の住所地以外の場所におけるものである場合においては、当該1週間について2回に限り最大拘束時間を16時間とすることができる。
四 前号の場合において、1日についての拘束時間が14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努めるものとすること。
五 勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、休息期間が継続九時間を下回らないものとすること。ただし、第3号ただし書に該当する場合、当該1週間について2回に限り、休息期間を継続8時間とすることができる。この場合において、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えるものとする。
六 運転時間は、2日(始業時刻から起算して48時間をいう。次条において同じ。)を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり44時間を超えないものとすること。
七 連続運転時間(1回がおおむね連続10分以上で、かつ、合計が30分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間をいう。以下この条において同じ。)は、4時間を超えないものとすること。(但し書き以下省略)
(8号省略)
2 使用者は、貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の休息期間については、当該自動車運転者の住所地における休息期間がそれ以外の場所における休息期間より長くなるように努めるものとする。
(以下3項から6項まで省略)。
改善基準告示第4条の内容は?
「改善基準告示」は、トラックなどの自動車運転者の労働条件向上を図るため、労働基準法では規制が難しい「拘束時間」、「休憩時間」、「運転時間等」の基準を定めたものです。
令和4年12月23日にトラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間とする改正がなされ、令和6年4月1日から適用されました。これがいわゆる「2024年問題」という輸送能力低下の懸念の根源の一つとなりました。
その改善基準告示の4条は「拘束時間」「休息時間」「運転時間」を具体的に定めた条項であり、この告示で最も重要な条文であり、ここから多く出題されています。
「拘束時間」と「休息時間」の定義は
・拘束時間
労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む。)の合計時間です。つまり、始業時刻から終業時刻まで使用者に拘束されるすべての時間を指します。
なお、労働時間は、作業時間(運転・荷扱い等)のほか、手待ち時間(荷待ち等)も含みます。
・休息時間
勤務と次の勤務との間にあって、睡眠時間を含む労働者の生活時間、つまり使用者の拘束を受けない全く自由な時間をいいます。
具体的に何を定めているの?
拘束時間(1年、1が月、1日)、1日の休息期間及び運転時間等を具体的の定めています。
以下の表を参照ください。

実際の過去問を見てみよう
これまで出題回数の多かった問題をいくつか挙げていきます。
ただし、前述のとおりこの改善基準告示は令和6年4月から改正されており、それ以前に実施された試験では旧基準に基づいて作成されています。
よって、ここで紹介する過去問は改正された告示の施行日以降のものを中心に紹介します。
なお、「問題番号」は、出題された「年」、「月」、問題の「番号」を記載したものです。
例)「R8-5-16」の場合、「令和8年5月」実施も問題「16」を意味します。
また、出題回数とは、本件分析期間(令和3年5月実から令和8年7月までに実施された計32回)の中で出題された回数を記載しております。
過去問①(出題回数:5回)
問題番号:R8-5-3、R7-7-13、R6-3-24、R6-11-19、R5-9-11
次の文章の正誤について答えなさい。
【問題】
使用者は、貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の休息期間については、当該自動車運転者の住所地における休息期間がそれ以外の場所における休息期間より長くなるように努めるものとする。
《正解・解説》
正解:○正
解説:設問のとおり。条文の文言そのものを問う問題です。(同条第2項参照)
過去問②(出題回数:2回)
問題番号:R6-1-10、R5-3-17
次の文章の正誤について答えなさい。
【問題】
使用者は、貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の休息期間については、当該自動車の運転時間より長くなるように努めるものとする。
《正解・解説》
正解:×誤
解説:自動車運転者の休息期間は、当該自動車運転者の住所地における休息期間がそれ以外の場所における休息期間より長くなるように努めなければなりません。
設問の「当該自動車の運転時間」は誤りです。(同条第2項参照)
過去問③(出題回数:2回)
問題番号:R8-7-29、R7-11-29
【問題】
貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間、休息期間及び運転時間について定められている事項を、次の①から③より1つ選び、( )内にその番号を記入しなさい。
・拘束時間は、1か月について( A )時間を超えず、かつ、1年について3,300時間を超えないものとすること。ただし、労使協定により、1年について6か月までは、1か月について310時間まで延長することができ、かつ、1年について( B )時間まで延長することができる。
・運転時間は、2日(始業時刻から起算して48時間をいう。)を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間あたり( C )を超えないものとすること。
① A:293 B:3,500 C:44
② A:284 B:3,400 C:44
③ A:284 B:3,400 C:40
《正解・解説》
正解:② (同条第1項第2号及び6号参照)
この問題は、改善基準告示第4条に登場する数字を正確に覚えているかを確認する典型的な問題です。
特に
284時間 → 3,300時間 → 310時間 → 3,400時間
9時間 → 44時間
という数字の組合せを整理して覚えておく必要があります
過去問④(出題回数:2回)
問題番号:R8-3-22、R7-9-23
【問題】
使用者は、貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者を使用する場合、運転時間は、2日(始業時刻から起算して48時間をいう。)を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり63時間を超えないものとすること
《正解・解説》
正解:×誤
解説:運転時間の具体的な数値を問う問題です。
運転時間は、2週間を平均し1週間当たり44時間を超えないものとすることとされています。
設問の「63時間」は誤りです。(同条第1項第6号参照)
この問題のように、実際の基準とは大きく異なる数字を入れて正誤を判断させる問題もあります。
「2日平均1日9時間」+「2週平均1週44時間」と整理して覚えます。
過去問⑤(出題回数:2回)
問題番号:R8-1-11、R7-5-21
【問題】
拘束時間は、1か月について284時間を超えず、かつ、1年について3,300時間を超えないものとすること。ただし、労使協定により、1年について8か月までは、1箇月について310時間まで延長することができ、かつ、1年について3,400時間まで延長することができるものとする。
《正解・解説》
正解:×誤
解説:労使協定により拘束時間が圓光できる期間は、1年につき6か月までです。
設問の「8か月まで」は誤りです。(同条第1項第1号)
改善基準告示第4条では、「何時間か」だけでなく、「何か月まで」「週何回まで」といった回数・期間も出題されます。
過去問⑥(出題回数:2回)
問題番号:R5-11-10、R5-5-24
【問題】(注)実際の設問内容を改正して記載しております。
連続運転時間(1回が連続15分以上で、かつ、合計が30分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間をいう。)は、4時間を超えないものとすること。
《正解・解説》
正解:×誤
解説:連続運転時間は、1回が連続10分以上です。
設問の「15分以上」は誤りです。(同条第1項第7号)
連続運転時間 → 4時間
中断 → 1回おおむね10分以上、合計30分以上
この条文で押さえておきたいポイント
① 数字は「単独」ではなく「セット」で覚える
改善基準告示第4条では、拘束時間、休息期間、運転時間、連続運転時間などについて、具体的な数字が繰り返し問われています。
ただし、数字を単独で覚えるだけでは不十分です。
例えば、
– 1年:3,300時間
– 1か月:284時間
– 労使協定による延長:310時間・3,400時間
– 運転時間:9時間・44時間
– 連続運転時間:4時間
というように、何についての数字なのかをセットで覚えることが重要です。
② 「例外」の数字にも注意する
改善基準告示第4条では、原則だけでなく、一定の場合に適用される例外も定められています。
例えば、
– 労使協定による拘束時間の延長
– 長距離貨物運送の場合の最大拘束時間
– 長距離貨物運送の場合の休息期間
– 連続運転時間の例外
などです。
したがって、単に「13時間」「15時間」などの数字だけを覚えるのではなく、どのような場合に例外が認められるのかも確認しておきましょう。
③改正前の数字と混同しない
改善基準告示は2024年4月1日から改正されたため、古い資料や過去問には現在とは異なる数字が出てくる場合があります。
役員法令試験対策では、現在適用されている基準を確認したうえで、過去問を見ることが重要です。
まとめ
今回解説した改善基準告示第4条は改正前からも出題頻度の高い条文です。
試験対策としては、拘束時間を始め条文で記載されている数値はできるだけ正確に抑えておく必要があります。
このサイトでは、今後も、役員法令試験の過去問から出題頻度の高い条文についてシリーズ化して解説していきます。
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