【役員法令試験対策】貨物自動車運送事業法第10条(運送約款)を過去問から解説|重要条文シリーズ⑧

役員法令試験に合格するには、過去問の分析・攻略を欠かすことはできません。
この記事では「重要条文シリーズ」として、過去問を分析して頻出の条文と過去問を取り上げ、法令試験突破に必要な知識の習得の一助になればと思います。

今回は、貨物自動車運送事業法第10条(運送約款)を取り上げます。

この条文は役員法令試験でよく出る?

特に出題回数が多かった条文

関東運輸局が公開している令和3年5月から令和8年7月までに実施された計32回の過去の試験問題を分析した結果、貨物自動車運送事業法第10条に関する問題は延べ20問出題され、今回の分析で出題回数が多かった条文の一つでした。

貨物自動車運送事業法第10条とは

条文の内容

(運送約款)
第10条 一般貨物自動車運送事業者は、運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 国土交通大臣は、前項の認可をしようとするときは、次に掲げる基準によって、これをしなければならない。
 ⑴ 荷主の正当な利益を害するおそれがないものであること。
 ⑵ 少なくとも運賃及び料金の収受並びに一般貨物自動車運送事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
 ⑶ 前号の運賃及び料金の収受に関する事項については、国土交通省令で定める特別の事情がある場合を除き、運送の役務の対価としての運賃と運送の役務以外の役務又は特別に生ずる費用に係る料金とを区分して収受する旨が明確に定められているものであること。
3 国土交通大臣が標準運送約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、一般貨物自動車運送事業者が、標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更したときは、その運送約款については、第1項の規定による認可を受けたものとみなす。

貨物自動車運送事業法第10条の内容は?

貨物自動車運送事業法第10条は、運送約款について定めた条文です。

「運送約款」とは?

運送約款とは、運送事業者が荷主と取引する際の運送条件・責任範囲・運賃や料金のルールをあらかじめ定型的に定めた契約条項の集合のことです。荷主との取引を効率化し、紛争の防止、責任範囲の明確化に用いられます。

運送約款を定めたときは?

事業者は、運送約款を定めたとき、または変更しようとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。

国土交通大臣は、認可申請のあった運送約款を認可しようとする場合は、次の基準により認可することになります。

・荷主の正当な利益を害するおそれがないこと

・運賃・料金の収受及び事業者の責任に関する事項が明確に定められていること

・原則として、運賃と料金を区分して収受する旨が明確に定められていること

 「運賃」は運送の役務の対価、「料金」は運送の役務以外の役務又は特別に生ずる費用に係るものです。運送約款の認可基準では、国土交通省令で定める特別の事情がある場合を除き、運賃と料金を区分して収受する旨が明確に定められていることが求められます。

必ず「認可」が必要か?

国土交通大臣が定めて公示した「標準運送約款」と同一の運送約款を定め、又は現在の運送約款をこの「標準運送約款」に変更する場合は、認可を受けたものとみなされます。

実際の過去問を見てみよう

これまで出題回数の多かった問題をいくつか挙げていきます。

なお、「問題番号」は、出題された「年」、「月」、問題の「番号」を記載したものです。

例)「R8-5-16」の場合、「令和8年5月」実施も問題「16」を意味します。

また、出題回数とは、本件分析期間(令和3年5月実から令和8年7月までに実施された計32回)の中で出題された回数を記載しております。

過去問①(出題回数:5回)

問題番号:R8-7-7、R7-11-1、R5-3-16、R5-11-19、R3-5-7

《問題》

一般貨物自動車運送事業者は、運送約款を定め、国土交通大臣にあらかじめ届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

【正解・解説】

 正解:×

 解説: 一般貨物自動車運送事業者は、運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければなりません(第10条第1項)。

 「あらかじめ届け出なければならない」とするのは誤りです。

過去問②(出題回数:5回)

問題番号:R7-3-7、R6-9-3、R6-1-5、R5-5-17、R3-7-17

《問題》

一般貨物自動車運送事業者は、運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

国土交通大臣が標準運送約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、事業者が、標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更する旨を届け出たときは、その運送約款については、認可を受けたものとみなす

【正解・解説】

 正解:×

 解説:国土交通大臣が標準運送約款を定めて公示した場合に、事業者が標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更したときは、その運送約款について、国土交通大臣の認可を受けたものとみなされます(第10条第3項参照)

したがって、設問の「変更する旨を届け出たとき」という部分が誤りです。

過去問③(出題回数:4回)

問題番号:R6-5-1、R5-9-1、R4-11-1、R3-11-11

《問題》

一般貨物自動車運送事業者は、運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。国土交通大臣が標準運送約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、一般貨物自動車運送事業者が、標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更したときは、その運送約款については、認可を受けたものとみなす

【正解・解説】

 正解:○

 解説:設問のとおり(第10条第1項及び3項参照)

過去問④(出題回数:2回)

問題番号:R8-5-30、R6-3-28

《問題》

国土交通大臣が一般貨物自動車運送事業者(以下事業者)の運送約款の認可をするときの基準として正しい事項を次の①から③より一つ選びなさい。

① 使用者は、労働者に対して賃金を明示すること。

② 運賃及び料金の収受に関する事項については、国土交通省令で定める特別の事情がある場合を除き、運送の役務の対価としての運賃と運送の役務以外の役務又は特別に生ずる費用に係る料金とを区分して収受する旨が明確に定められているものであること。

③ 事業者の正当な利益を害するおそれがないものであること

【正解・解説】

 正解:②(第10条第2項第3号参照)

 解説:①の「使用者は、労働者に対して賃金を明示すること」は労働基準法第15条第1項に定める「労働条件の明示」についてです。

    ③は「事業者」ではなく「荷主」の誤り。

過去問⑤(出題回数:2回)

問題番号:R7-7-4、R7-1-8

《問題》

一般貨物自動車運送事業者が、現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更しようとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければならない。

【正解・解説】

 正解:×

 解説:現に定めている運送約款を「標準運送約款」と同一のものに変更したときは、その運送約款について、国土交通大臣の認可を受けたものとみなされます(第10条第3項参照)

 したがって、設問の「国土交通大臣の認可を受けなければならない」という部分が誤りです。

この条文で押さえておきたいポイント

1.運送約款を定めるとき、変更するときは原則として認可が必要

貨物自動車運送事業法第10条第1項では、一般貨物自動車運送事業者が運送約款を定めるときは、国土交通大臣の認可を受けなければならないと定めています。また、これを変更しようとするときも、同様に認可が必要です。

過去問では、「認可を受ける」ことを「届け出る」と置き換えた問題が繰り返し出題されています。

運送約款については、単なる届出ではなく、原則として国土交通大臣の認可が必要であることを押さえておきましょう。

2.運送約款の認可基準は3つ

同条第2項では、国土交通大臣が運送約款を認可する際の基準として、次の3つを定めています。

– 荷主の正当な利益を害するおそれがないこと

– 運賃・料金の収受及び一般貨物自動車運送事業者の責任に関する事項が明確に定められていること

– 原則として、運賃と料金を区分して収受する旨が明確に定められていること

特に、運賃は運送の役務の対価であり、料金は運送の役務以外の役務又は特別に生ずる費用に係るものであるという区別が重要です。

過去問では、認可基準の主体を「荷主」から「事業者」に置き換えたり、運賃と料金を区分して収受するという基準を問うたりする問題が出題されています。

3.標準運送約款と同一の場合は、認可を受けたものとみなされる

同条第3項では、国土交通大臣が標準運送約款を定めて公示した場合に、一般貨物自動車運送事業者が標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更したときは、その運送約款について、認可を受けたものとみなすことを定めています。

ここで重要なのは、標準運送約款と同一のものにした場合は、認可を受けたものとみなされるという点です。

過去問では、この規定について「変更する旨を届け出たとき」としたり、「国土交通大臣の認可を受けなければならない」としたりする問題が出題されています。

第1項の原則と、第3項の認可を受けたものとみなす規定を区別して理解しておきましょう。

まとめ

今回は、貨物自動車運送事業法第10条(運送約款)について、関東運輸局が公開している役員法令試験の過去問を基に解説しました。

特に、次の3点を整理しておきましょう。

① 運送約款を定めるとき、変更するときは、原則として国土交通大臣の認可が必要であること

②運送約款の認可基準は3つあり、特に運賃と料金の区分が重要であること

③標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は変更した場合は、認可を受けたものとみなされること

過去問では、「認可」と「届出」の違いや、認可基準における「荷主」と「事業者」の違い、標準運送約款に関する規定が繰り返し問われています。

条文の文言を正確に覚えるとともに、第10条第1項、第2項、第3項それぞれの役割を整理しておくことが大切です。

このサイトでは、今後も役員法令試験の過去問を分析し、出題頻度の高い条文や重要な論点をシリーズとして解説していきます。

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この記事を書いた人 Wrote this article

行政書士石川まさゆき

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