運送会社の原価計算とは?1台・1kmあたりのコストを把握する方法

「この運賃では、あまり利益が残らない」

運送会社を経営していると、このように感じることがあるのではないでしょうか。

しかし、「安い」「利益が出ない」と感じていても、自社の運送に実際いくらのコストがかかっているのかを数字で把握していなければ、具体的にどこに問題があるのか分かりにくいものです。

そこで重要になるのが、運送会社の「原価」を把握することです。

トラック1台を動かすためには、燃料費だけでなく、車両費、人件費、修繕費、保険料、営業所などの間接費など、さまざまなコストが発生します。

また、現在、国土交通省では、改正トラック法によって導入される「適正原価」の設定に向けた検討が進められています。

2026年10月1日に開催された第3回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」では、適正原価と運賃・料金の関係や、原価の構成などについても検討されています。

この記事では、運送会社が自社の原価を把握するための基本的な考え方と、「適正原価」と自社の原価計算との関係について、できるだけ分かりやすく整理します。

なお、実際の原価計算方法は、車種や運行形態、会社の費用構造などによって異なります。この記事では、あくまで自社の原価を把握するための基本的な考え方を説明します。

なぜ運送会社は「原価」を把握する必要があるのか

運送会社にとって、売上高だけを見ていても、その運送が本当に採算に合っているのかは分かりません。

例えば、同じ100万円の売上があったとしても、その運送にかかったコストが70万円の会社と90万円の会社では、残る利益は大きく異なります。

そのため、「いくら売り上げたか」だけではなく、

「その売上を得るために、いくらコストがかかったのか」

を見る必要があります。

「この運賃では安い」という感覚を数字にする

運送会社では、

「この仕事は手間がかかる」

「待機時間が長い」

「燃料を多く使う」

「この運賃では割に合わない」

といった感覚を持つことがあります。

こうした感覚を、実際の数字で確認するためにも、原価を把握することには意味があります。

運送会社の原価にはどんな費用がある?

トラック運送では、1台の車両を運行するためにさまざまな費用が発生します。

大きく分けると、次のように考えることができます。

① 燃料など運行に直接かかる費用

代表的なのが燃料費です。

走行距離や燃費、燃料価格によって変動します。

また、運行に伴って発生するその他の費用についても、自社の実態に応じて把握します。

② 車両にかかる費用

トラックを保有・使用するためには、車両そのものに関する費用が発生します。

例えば、

– 車両購入費・リース費

– 自動車関係の税金

– 車検・点検費用

– 修繕費

– タイヤなどの消耗品費

などです。

どの費用をどのように計上するかは、車両の保有方法や会社の会計処理などによって異なります。

③ ドライバーにかかる人件費

運送業ではドライバーの人件費も大きなコストになります。

給与だけでなく、会社が負担する社会保険料なども含めて考える必要があります。

さらに、会社によっては賞与なども発生します。

原価を把握するときには、「給与」だけを見るのではなく、会社が実際に負担している人件費全体を確認することが重要です。

④ 営業所などの間接費

トラックを走らせるための直接的な費用だけでなく、会社を運営するための費用もあります。

例えば、

– 営業所の賃借料

– 通信費

– システム利用料

– 事務用品費

– 管理部門の人件費

などです。

こうした費用は、特定の1台のトラックだけに直接対応させることが難しい場合があります。

そのため、会社全体の費用として把握したうえで、どのように配分するかを考える必要があります。

「固定費」と「変動費」に分けて考える

原価を考える際には、「走れば増える費用」と「走らなくても発生する費用」を分けて考える方法があります。

走れば増える費用

例えば燃料費は、一般的には走行距離に応じて増減する費用です。

走らなくても発生する費用

一方、車両のリース料や営業所の賃借料などは、走行距離が少なくても発生する費用があります。

このように費用の性質を分けて考えると、「なぜ売上があるのに利益が残らないのか」を考える材料になります。

トラック1台あたりの原価を考える

自社の原価を把握する方法の一つが、トラック1台あたりのコストを確認することです。

年間コストを計算する

例えば、ある車両について年間に発生する費用を整理し、それを月単位、日単位などに換算していきます。

重要なのは、最初から複雑な計算をすることではありません。

まず、

「このトラックを1年間動かすために、会社はいくら負担しているのか」

を把握することです。

そこから、月単位、日単位などに数字を分解していくと、自社の車両コストが見えやすくなります。

「1kmあたりの原価」を考える

さらに、年間の走行距離が分かれば、1kmあたりのコストを考えることもできます。

基本的な考え方は、

年間コスト ÷ 年間走行距離 = 1kmあたりのコスト

です。

ただし、これはあくまで原価を把握するための一つの指標です。

実際の運送では、同じ1kmでも、車両の種類、運行時間、待機、荷役などによって必要となるコストが異なるため、1kmあたりの数字だけで運送の採算を判断することはできません。

実際の運送では「走行距離」だけでは足りない

運送のコストは走行距離だけで決まるわけではありません。

例えば、同じ距離を走る仕事でも、長時間の待機が発生する仕事と、ほとんど待機がない仕事では、必要となる時間が異なります。

また、荷役やその他の作業が発生する場合もあります。

そのため、実際の採算を考える場合には、「何km走ったか」だけでなく、

「どれだけの時間を使ったのか」

「どのような作業が発生したのか」

という視点も重要になります。

原価計算で注意したいこと

会社全体の原価と車両別原価は違う

会社全体の費用を把握することと、トラック1台ごとの原価を把握することは同じではありません。

特定の車両に直接対応する費用もあれば、営業所の賃借料や管理部門の人件費のように、会社全体で負担している費用もあります。

そのため、「1台あたりの原価」を計算するときには、どの費用をどのように配分するかという問題があります。

車種や運行形態によって原価は変わる

大型車と小型車では、車両費や燃料費などが異なります。

また、長距離輸送と近距離輸送でも、必要となる時間や費用は異なります。

そのため、会社全体の平均値だけで判断すると、個々の運送の採算が見えにくくなる場合があります。

「原価=運賃」ではない

ここも重要なポイントです。

原価は、運送会社がその仕事を行うために必要となるコストです。

一方、実際の運賃は、原価だけで決まるものではありません。

したがって、

「原価が100円/kmだから、運賃も100円/kmになる」

という単純な話ではありません。

原価を把握することは、あくまで自社の運送事業の採算を考えるための基礎となる数字を把握することです。

「適正原価」と自社の原価計算は同じものなのか?

ここは、現在の「適正原価」の検討を理解するうえで重要なポイントです。

国土交通省の検討資料では、「適正原価」は、事業の適正な運営に当たりトラック事業者が一般的に負担する必要がある費用を積み上げて算出する「費用サイド」のものとされています。

一方、トラック事業者が実際に荷主等から収受する運賃・料金は「収入サイド」であり、適正原価とは性質が異なると整理されています。

また、適正原価については、費用項目ごとに運賃・料金収入と比較するのではなく、適正原価全体と運賃・料金収入全体を比較して判断する考え方が示されています。

自社の原価計算は、あくまで自社の経営実態を把握するためのものです。

それでも、今「原価」を把握しておく意味がある

では、自社の原価計算と国土交通省の「適正原価」が別のものなら、原価を計算する意味はないのでしょうか。

そうではありません。

国土交通省では現在、「適正原価」の設定に向けて、車型・車種、地域、料金の算出方法、人件費、燃料費、固定費・変動費、実車率、回送など、さまざまな論点を検討しています。

また、第3回検討会の資料では、物流効率化によって実際の原価が下がる場合の制度上の考え方や、「原価計算の結果等から、十分な賃金が支払われていることが確認できる」場合の取扱いについても、今後の検討事項として示されています。

そのため、今の段階から自社の原価を把握しておくことは、今後の制度を理解し、自社の経営状況を考えるための基礎資料を持っておくという意味があります。

ただし、現時点で国土交通省が特定の原価計算方法を運送会社に求めているという意味ではありません。

まずは自社の原価を「見える化」してみよう

原価計算というと、複雑な計算をイメージするかもしれません。

しかし、最初から完璧な原価計算を行う必要はありません。

まずは、

– トラック1台に年間いくらかかっているのか

– 年間に何km走っているのか

– 燃料費はいくらかかっているのか

– ドライバーの人件費はいくらか

– 修繕やタイヤなどにいくらかかっているのか

– 営業所などの間接費はいくらか

といった数字を整理してみることから始められます。

そして、

「この仕事を受けることで、会社にはどれくらいのコストが発生しているのか」

という視点で数字を見ることが、自社の運送事業の採算を考える第一歩になります。

まとめ

運送会社にとって、売上高だけでなく「その売上を得るためにどれだけのコストがかかっているのか」を把握することは重要です。

原価を把握することで、

– トラック1台を維持するためにどれくらいの費用が必要なのか

– 1km走行するためにどの程度のコストがかかるのか

– どのような運送が採算に合っているのか

– どのような仕事でコストが大きくなっているのか

などを考えるための材料になります。

また、国土交通省では、改正トラック法に基づく「適正原価」の設定に向けた検討が進められています。

ただし、自社で計算する原価と、国土交通大臣が定める「適正原価」は同じものではありません。

だからこそ、国の制度の具体的な内容がまだ決まっていない今の段階でも、まずは自社自身の運送原価を把握しておくことには意味があります。

「うちのトラックは、実際には1台いくらで動いているのか?」

この数字を把握することが、運送会社の経営を考えるうえでの出発点になります。

「千葉の運送業許可・更新サポートオフィス」は運送業専門の行政書士事務所として運送事業者の皆様をサポートしております。
役員法令試験対策、運送事業許可、事業計画の変更(営業所移転・増減車など)、巡回指導、Gマーク取得、外国人ドライバーの採用、その他お困りの事があればいつでもご相談ください。

「千葉の運送業許可・更新サポートオフィス」のサイトはこちら

この記事を書いた人 Wrote this article

行政書士石川まさゆき

行政書士石川まさゆき

TOP