国土交通省の通達では、貨物自動車運送事業者の法令違反について、貨物自動車運送事業法第33条などに基づく許可の取消し等の行政処分を行う際の基準が定められています。
対象となるのは、一般貨物自動車運送事業者及び特定貨物自動車運送事業者です。
通達では、行政処分だけでなく、それより軽い「勧告」「警告」も定められています。
これらを合わせて「行政処分等」としています。
行政処分にはどのような種類がある?
通達では、行政処分を軽微なものから順に、
1. 自動車等の使用停止処分
2. 事業停止処分
3. 許可の取消処分
としています。
また、これらの行政処分に至らないものについては、
1. 勧告
2. 警告
があります。つまり、法令違反があった場合に、必ず直ちに事業停止や許可取消しになるという仕組みではありません。
違反の内容などに応じて、処分の種類や量定が定められています。
行政処分は「処分日車数」で決まる
行政処分を理解するうえで、重要なのが「処分日車数」という考え方です。
通達では、違反行為ごとに行政処分等の量定を定め、その基準となる「基準日車等」に基づいて処分を行うとしています。
そして、行政処分の対象となる営業所について、それぞれの基準日車等を合計したものが「処分日車数」です。
簡単にいえば、
「違反行為に応じて設定された日車数を積み上げ、その合計をもとに処分を決める」
という仕組みです。
例えば、複数の違反行為が認められた場合には、それぞれの基準日車等を合計して処分日車数を算出します。
「日車」とは?
「日車」という言葉は、行政処分を理解するときに少し分かりにくい言葉です。
例えば、1台の車両を1日使用停止にすると「1日車」と考えることができます。
複数の車両を複数日停止する場合には、その組み合わせによって日車数が増えていきます。
通達では、この処分日車数に応じて、使用停止となる車両の台数や期間を定めています。
そのため、「100日車だから100日間、1台を止める」という単純な仕組みではありません。
どのくらいの車両を、何日間使用停止にするかについて、通達に基準が設けられています。
違反点数も累積する
行政処分を理解するうえでもう一つ重要なのが、「違反点数」です。
通達では、処分日車数10日車までごとに1点の違反点数を付すこととされています。
この違反点数は、事業者ごとに、管轄区域単位で累計して管理されます。
また、違反点数の累計期間は原則として3年間とされています。
ただし、一定の条件を満たす場合には、2年間で違反点数が消滅する規定も設けられています。
したがって、行政処分は「そのときの違反だけ」を見ればよいとは限らず、過去の行政処分等による違反点数の累積も関係する場合があります。
3種類の行政処分
「自動車等の使用停止処分」とは?
行政処分の一つが、「自動車等の使用停止処分」です。
通達では、原則として違反営業所等に所属する事業用自動車について、処分日車数に基づいて6か月以内の期間を定めて使用停止を行うとしています。
また、使用停止の対象となる車両数についても、処分日車数と営業所に所属する事業用自動車の数に応じて基準が定められています。
原則として、使用停止の対象となる車両数は、所属する事業用自動車の5割を超えないものとされています。
つまり、行政処分の内容によっては、営業所のトラックの一部が一定期間使用できなくなる可能性があります。
次に重い「事業停止処分」
使用停止処分より重い行政処分が「事業停止処分」です。
通達では、一定の重大な違反に該当した場合、30日間の事業停止処分を行うこととされています。
その対象として、例えば、
・運転者の勤務時間・乗務時間に関する基準が著しく遵守されていない場合
・全運転者等に対して点呼を全く実施していない場合
・営業所に配置するすべての事業用自動車について定期点検整備を全く実施していない場合
・整備管理者が全く不在の場合
・運行管理者が全く不在の場合
・名義を他人に利用させていた場合
・事業の貸渡し等を行っていた場合
・国土交通大臣による検査を拒む、妨げる、忌避する、または質問に対して陳述をしない、虚偽の陳述をする場合
などが挙げられています。
なお、これは通達に定められている事項の一部です。
また、違反点数の累積や処分日車数によっても、事業停止処分の対象となる場合があります。
事業停止になるとどうなる?
通達では、事業停止処分の対象となった営業所について、事業停止期間中、その営業所に所属するすべての事業用自動車について使用停止を行うほか、その営業所に係る関係行為を停止させるとしています。
つまり、単に一部のトラックを使用できなくなる使用停止処分とは異なり、営業所の事業そのものが停止されることになります。
事業停止処分の期間は、処分日車数などに応じて定められています。
最も重い「許可取消処分」
行政処分の中で最も重いものが「許可の取消処分」です。
通達では、行政処分の種類を、
「自動車等の使用停止処分」
→「事業停止処分」
→「許可の取消処分」
の順に定めています。
つまり、許可取消しは、使用停止や事業停止よりも重い行政処分として位置付けられています。
ただし、通達には許可取消しに関する細かな基準が複数定められているため、「違反したらすぐ許可取消しになる」という意味ではありません。
具体的なケースについては、それぞれの処分基準を確認する必要があります。
行政処分を受けた後にも注意が必要
通達では、許可取消処分を除く行政処分等を行う場合、原則として事業者を運輸支局または地方運輸局に呼び出して事業の改善について指導するとともに、行政処分等を行った日から原則3か月以内に、その状況について報告するよう措置することとされています。
つまり、行政処分は「処分を受けたら終わり」というものではありません。
その後の事業改善や、その状況の報告も求められる場合があります。
《行政処分等の概要一覧》

運送会社が知っておきたいこと
行政処分について重要なのは、単に「処分されるか、されないか」だけではありません。
国土交通省の通達では、
・どのような違反があったのか
・違反に対してどの程度の処分日車数が付くのか
・過去の違反点数がどの程度累積しているのか
・どのような場合に使用停止となるのか
・どのような場合に事業停止となるのか
・許可取消しの基準に該当するか
などを踏まえて、行政処分等の基準が定められています。
そのため、運送会社としては、日頃から関係する法令や安全管理上のルールを確認し、違反を防ぐことが重要です。
また、行政処分の基準は改正されることがあります。
今回取り上げた通達も、平成21年の制定後、複数回の改正が行われており、令和7年2月28日にも改正されています。
行政処分について確認するときには、古い情報ではなく、最新の基準を確認することが重要です。
「何となく知っている」ではなく、自社にどのような法令上の義務があり、どのような違反が行政処分につながる可能性があるのかを把握しておくことが、適正な事業運営につながります。
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