物流倉庫分野で外国人材の受入れを検討している事業者にとって、そのターゲットは1号特定技能外国人です。
国土交通省は、2026年10月26日、物流倉庫分野における特定技能1号評価試験の申請受付を開始したと発表しました。
物流倉庫分野は、2026年1月に特定技能制度の対象分野に追加された分野で、政府は2029年3月までに11,400人の受け入れを見込んでいます。
今回、技能評価試験の申請受付が始まったことで、受入れに向けた具体的な準備を進める事業者も出てくると考えられます。
ただし、どの事業者でも特定技能外国人を受け入れられるわけではありません。また、外国人が従事できる業務にも一定の範囲があります。
この記事では、国土交通省が公表している資料に基づき、物流倉庫分野における特定技能1号の概要、受入れ可能な事業者、外国人が従事できる業務、受入れに当たって確認したい要件について解説します。
1. 物流倉庫分野の特定技能1号とは?
物流倉庫分野が特定技能の対象に追加
物流倉庫分野は、2026年1月23日の閣議決定により、特定技能制度の対象分野に追加されました。
特定技能制度は、国内で人材を確保するための取組を行ってもなお人材の確保が困難な産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる制度です。
物流倉庫分野では、物流倉庫内で行われる貨物の入出庫、保管などの作業に従事する外国人材の受入れが可能となります。
なお、2026年10月時点で、特定技能2号受入れは認められていません。
2. 物流倉庫分野で特定技能外国人を受け入れられる事業者
物流倉庫分野では、受入れ可能な事業者の類型が定められています。
国土交通省の公表資料では、主に次の4つの類型が示されています。
① 倉庫業の登録を受け、自ら倉庫作業を行う事業者(類型A)

倉庫業法に基づく登録を受けた倉庫業者で、自ら倉庫作業を実施する事業者です。
例えば、登録を受けた倉庫業者が、自社の倉庫で貨物の入出庫や保管、ピッキングなどを行っている場合が該当します。
② 登録倉庫業者から委託を受けて倉庫作業を行う事業者(類型B)

倉庫業の登録を受けた倉庫業者が現に営業に使用している倉庫において、その倉庫業者から委託を受けて倉庫作業を実施する事業者です。
この類型では、委託を受けて作業を行う事業者自身が、特定技能外国人の受入れ機関となります。
ただし、委託元の倉庫業者と委託先の事業者が、特定技能外国人の雇用の継続に係る責任を負う旨の協定書を共同で作成する必要があります。
その協定書には、雇用の継続を図るため、倉庫業者が就労支援を行う旨を記載することとされています。
倉庫作業を外部の事業者に委託している場合には、この要件を確認する必要があります。
③ 一般貨物自動車運送事業者・特定貨物自動車運送事業者で、自ら倉庫作業を行う事業者(類型C(1))

一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可を受けた事業者も、一定の要件のもとで受入れが可能です。
具体的には、自らが占有する倉庫で倉庫作業を実施する事業者が該当します。
そのため、運送事業を営んでいるだけで当然に受入れが認められるわけではなく、対象となる倉庫や実施する作業などについて確認が必要です。
④ 運送事業に関連して、有償で倉庫作業を行う事業(類型C(2))

一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可を受けた事業者については、その事業に関連して、他人の需要に応じ、有償で倉庫作業を実施する場合も対象となり得ます。
ただし、この場合には、運送に関する対価とは別に作業料金を収受して、倉庫作業を引き受けている必要があります。
運送に伴う荷役として、運賃に含めて引き受けている作業は、ここでいう倉庫作業には該当しません。
運送会社が物流倉庫分野での受入れを検討する場合は、許可の有無だけでなく、倉庫の利用状況や実際の契約・料金体系についても確認することが重要です。
3. 特定技能外国人が従事できる業務
物流倉庫分野の1号特定技能外国人が従事できる業務は、物流倉庫内で行われる貨物の入出庫、保管その他の倉庫内作業です。
国土交通省は、従事できる主な業務として次のものを挙げています。
– 入出庫貨物の受渡し・検品
– 貨物の移動
– 保管庫への格納
– ピッキング
– 流通加工
ここでは、代表的な業務について整理します。
① 入出庫貨物の受渡し・検品
倉庫に入庫する貨物や、倉庫から出庫する貨物について、受渡しや検品を行う業務です。
② 貨物の移動・保管庫への格納
倉庫内で貨物を移動させ、所定の保管場所へ格納する業務です。
③ ピッキング
出荷指示などに基づき、倉庫内から必要な商品や貨物を取り出す作業です。
④ 流通加工
物流倉庫分野では、流通加工も主な業務として認められています。
国土交通省のQ&Aでは、流通加工について、物資を流通させるために適した状態にするための加工と説明されています。
具体例として、次の作業が挙げられています。
– 小分け・再包装
– タグの取付け
– ラベル貼り
– セット組み
ただし、商品そのものの機能を完成させたり、性能を向上させたりする作業は、製造工程の一環となるため、物流倉庫分野の流通加工には含まれないとされています。
物流倉庫内で行われる作業であっても、すべてが対象になるわけではない点に注意が必要です。
関連業務として従事できる作業
上記の主な業務に加えて、主たる業務に従事する日本人が通常行う関連業務に、付随的に従事することも認められています。
想定される関連業務には、次のものがあります。
– 事務所への連絡や報告
– 作業場所の整理整頓や清掃
– 台風などの接近に備えた貨物の移動や雨水侵入防止措置
– 安全衛生、懇談会、教育訓練など、職場で開催される会議体への参加
ただし、関連業務だけに従事することは認められていません。
特定技能1号外国人は、評価試験などで確認された技能を要する倉庫内作業を主として行う必要があります。
また、物流倉庫分野では、包装されていない食品に直接触れる業務に従事することはできないとされています。
採用後の業務内容を決める際には、実際に担当させる作業が対象業務に該当するか、関連業務に偏っていないかを確認しましょう。
4. 1号特定技能外国人に求められる技能・日本語能力
物流倉庫分野で特定技能1号として受け入れる外国人には、技能水準と日本語能力水準に関する要件があります。
① 物流倉庫分野特定技能1号評価試験への合格
原則として、物流倉庫分野特定技能1号評価試験に合格する必要があります。
この試験は、物流倉庫における保管・荷役、流通加工、安全衛生に関する実践的な知識や、機器の取扱いを理解したうえで、作業場面に応じて適切に判断できるかを確認するものです。
② 日本語能力に関する要件
日本語能力については、「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上の水準が求められます。
国土交通省の運用要領別冊では、次の試験が示されています。
– 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2.2相当以上
– 日本語能力試験(JLPT)N4以上
5. 受入れ事業者に求められる主な要件
物流倉庫分野では、外国人本人の技能・日本語能力だけでなく、受入れ事業者側にも分野特有の要件が定められています。
ここでは、国土交通省の上乗せ基準告示と運用要領別冊に基づき、主な事項を整理します。
① 対象となる事業者に該当すること
前述したとおり、受入れ事業者は、登録倉庫業者、登録倉庫業者から委託を受けて倉庫作業を行う事業者、または一定の要件を満たす一般貨物自動車運送事業者・特定貨物自動車運送事業者などに該当する必要があります。
自社の事業内容や倉庫の利用状況が、対象となる類型に該当するかを確認しましょう。
② 分野別協議会への加入
特定技能制度では、分野所管省庁が設置する分野別協議会への加入が、受入れ機関に求められています。
物流倉庫分野についても、受入れ事業者には、協議会の構成員となることや、協議会への必要な協力などが求められています。
ただし、国土交通省の案内では、2026年10月時点で物流倉庫分野の特定技能に係る分野別協議会は設置に向けて調整中とされています。
加入要件、必要書類、加入受付の開始時期などについては、今後の国土交通省の発表を確認する必要があります。
③ 入庫・在庫・出庫管理機能を有する情報システムの活用
受入れ事業者には、入庫管理、在庫管理、出庫管理の機能を有する情報システムを利活用していることが求められます。
国土交通省のQ&Aでは、いわゆる倉庫管理システム(WMS)が想定されています。
ただし、必ずしも「WMS」という名称で製品化されたシステムである必要はなく、入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を満たしていればよいとされています。
また、事業者自身がシステムを所有している必要はなく、特定技能外国人が就業する事業所でシステムを利用できる状態であればよいと説明されています。
④ 生産性・労働安全衛生の向上に資する機器や情報システムの継続的な活用
受入れ事業者には、入庫・在庫・出庫管理機能を有する情報システムに加えて、そのシステムと連携することで機能が拡充される、生産性や労働安全衛生の向上に資する機器または情報システムを継続して利活用することも求められています。
さらに、その利活用状況について、協議会に加入した日から1年以内に、協議会が定める方法により報告することとされています。
どのような機器や情報システムが該当するか、具体的にどのような方法で報告するかについては、関係する告示・運用要領や、今後の協議会の案内を確認することが必要です。
⑤ 雇用契約・支援体制など、特定技能制度全般の要件を満たすこと
物流倉庫分野固有の基準に加えて、特定技能制度全般に関する要件も満たす必要があります。
例えば、特定技能雇用契約や1号特定技能外国人支援計画について、関係法令に定められた基準に適合することが求められます。
そのため、物流倉庫分野の受入れ要件だけを確認すればよいわけではありません。雇用契約、報酬、支援体制、在留資格に関する申請などについても、関係する基準を確認する必要があります。
6. 物流倉庫分野での受入れを検討する事業者が確認したいこと
物流倉庫分野の1号特定技能外国人を活用するためには、外国人本人の試験合格や日本語能力だけでなく、受入れ事業者側の要件も確認する必要があります。
受入れを検討する場合には、次の事項を整理しておくとよいでしょう。
① 自社が受入れ可能な事業者の類型に該当するか
倉庫業の登録、運送事業の許可、倉庫の利用状況、委託契約の内容などを確認します。
② 外国人に担当させる業務が対象となるか
入出庫、検品、貨物の移動、格納、ピッキング、流通加工など、実際の業務内容を整理します。関連業務だけに従事させることは認められない点にも注意が必要です。
③ 技能・日本語能力に関する要件を満たしているか
評価試験の合格や日本語能力の証明について、外国人本人の状況を確認します。
④ 事業者側のシステム要件を満たしているか
入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を有する情報システムを利用しているか、また、生産性・労働安全衛生の向上に資する機器や情報システムを継続的に活用しているかを確認します。
⑤ 協議会への加入など、今後の手続を確認しているか
物流倉庫分野の協議会については、2026年10月時点で設置に向けた調整が進められています。加入受付などの最新情報を確認し、必要な準備を進めることが重要です。
これらの要件を確認したうえで、採用計画や受入れ時期を検討しましょう。
7. まとめ
今回は、2026年10月26日に特定技能1号評価試験の申請受付が開始された物流倉庫分野について、受入れ可能な事業者、外国人が従事できる業務、受入れ事業者に求められる主な要件を解説しました。
物流倉庫分野では、登録倉庫業者だけでなく、一定の要件を満たす倉庫作業の委託先や、一般貨物自動車運送事業者・特定貨物自動車運送事業者も受入れの対象となり得ます。
一方、外国人が従事できる業務は、物流倉庫内で行われる貨物の入出庫、保管その他の倉庫内作業に限られます。流通加工などの関連業務についても、制度上の範囲を確認することが重要です。
また、受入れ事業者には、分野別協議会への加入や、入庫・在庫・出庫管理機能を有する情報システムの活用など、物流倉庫分野固有の要件も定められています。
特定技能1号評価試験の申請受付は開始されましたが、実際に外国人を受け入れるためには、試験や日本語能力の要件だけでなく、受入れ事業者側の要件も満たさなければなりません。
受入れを検討する事業者は、国土交通省が公表する最新の資料を確認し、自社の事業内容や受入れ体制が要件に適合するかを確認したうえで、準備を進めましょう。
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